及川敦子建築設計室

work 作品

隣地に建つ住居の「離れ」の計画。既存の庭木を活かした。

かみのっぽろの家

   
所在地北海道札幌市
建物用途専用住宅
延床面積84.01㎡
施工拓友建設
竣工2013
    
撮影及川敦子

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隣接する敷地に建つ住宅の「離れ」として計画された家です。
これから年齢を重ねていくご夫婦の生活を支えるコンパクトな平面、 定年後の新しい生活に活力を与え、ゆったりと呼吸できるような空間を目指しました。
この敷地が持つ、隣地の前庭までひと繋がりに広がる伸びやかさを手がかりに、建物が建ったあともその魅力が活かされるようなプランを探りました。

外部においては、矩形の輪郭にするとやや西を向いてしまう壁を真南に正対させ、温熱環境に配慮。この「離れ」にとっての「母屋」にあたる隣家に寄り添わせ、話し相手の方に身体を傾けるような身振りを持つ外観としています。

内部では、中心に立つ白く塗られた斜めの壁をプランに持ち込み、日照時間の短い北国の冬、暖かい午後の陽をリビングに導く解決としました。45°の角度は地震の揺れに抵抗する耐力壁としても効果的であり、1.5層分の高さを持つたっぷりとした空気量のワンルームを、壁のこちら側とあちら側に分けてそれぞれの居場所を作り出します。また視線が最も遠くまで伸びる方向に向けることで、空間の広がりが自然に感じられるよう意図しました。

木の産地である北海道。本州の「杉」のように、流通・価格共に気軽に使える地域の生活文化に浸透した材となりうる材は何だろうと考え、道産材を使ったカジュアルな空間の実現を設計のテーマの一つに据えました。国内で森林率が最多である当地において最も蓄積量の多いトドマツを中心に、杉、カラマツそれぞれの持ち味を引き出すことを考えました。トドマツの持つ清潔感と白さを活かした内部空間とし、内外装と構造材にも下川町産の材を使用しています。
時間の経過とともに木の色が変わるのを楽しみながら、住まい手の生活もゆっくりと流れていくことを願っています。


建てる前にお施主様が悩んでいた事・希望

「市内の古い家に住んでいた、実家の両親の生活の様子を通して、2階のある暮らし、使いづらいお風呂や台所、冬の寒さなどが負担になることを実感し、老後の住まいが不便だと生活が 大変だと感じるようになったことがきっかけで、それらを解消する事ができる家が欲しいと考えるようになりました。」

設計者を選んだ決め手

「家庭菜園やガーデニングをしながらの生活を思い描いた時、やはり木で造った家が良いと思いました。リフォームをした事例を実際に見せてもらったら、壁や天井、壁を埋め尽くす本棚 にも木が使われていて、雰囲気が気に入ったことと、空気がやわらかくて、暖かかったので、安心してお願いすることにしました。」

お施主様の声

「たくさんの希望を出したのですが、ひとつずつ丁寧に、お互いが納得するまで案を出してもらって、殆どすべてが叶えられていますので、大満足の家になりました。具体的に言えば バリアフリーであること、朝日が入る食卓を囲みたいことなどです。夏は涼しく冬暖かいのはもちろんです。面積は小さくても広く見えるのでとても気分が良いです。依頼して本当に良かったと思います。」

掲載誌

建築知識2019年1月号『間取りのすごい新常識』
建築知識2019年9月号『平家設計 成功の方程式』
書籍『間取りのすごい新常識』/ エクスナレッジ

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